リーブノートレイスの7原則は、すべて北米を中心とする欧米諸国で蓄積された科学的根拠に基づいています。当会では、LNT指導者を支えるためのエビデンスを提供していただける多岐にわたる分野で国内の研究者をサポートします。この活動が、優れたLNT指導者を育て、多くのアウトドアレクリエーショナルユーザーがLNTを行動に移し、日本のアウトドアフィールドがいつまでも健全な自然環境を維持することになると信じています。

LNTではこんな研究データを求めています
✔️アウトドアレクリエーションによる植物、動物、土壌、水質へのインパクト
✔️アウトドアレクリエーショナルユザーの観光行動
✔️自然公園管理者、地域社会による環境保全政策
✔️教育プログラムによるアウトドアレクリエーショナルユーザー、リーダーの環境への関心、知識、態度、行動変容
✔️自然保護に関するサインボード、ディスプレイ、ウェブサイト、eラーニングなどの情報メディアの効果
✔️研究インデックス
2025年度LNT研究助成採択研究課題

台湾の「山林開放」と登山者教育
松金ゆうこさん(筑波大学大学院理工情報生命学術院生命地球科学研究群山岳科学学位プログラム博士前期課程1年)
私は台湾の登山事情を研究しています。台湾の面積の7割が山地で、3000mを超える高山も多くあります。かつて山地は多くの人々にとって近寄り難い場所でしたが、現在は登山が余暇活動として普及しています。近年「山林開放」が進み、登山者数増加に伴う遭難や環境問題への対応のため学校や社会で積極的に登山者教育が行われ、リーブノートレイス運動も官民協働で推進されています。その状況を明らかにし、持続可能な登山のあり方を探ります。

中小規模スキー場における存続メカニズムの検討―地域と住民に着目して―
黒澤俊平さん(筑波大学理工情報生命学術院生命地球科学研究群地球科学学位プログラム博士後期課程3年)
中小規模スキー場の持続可能性に注目し、観光地理学の視点から北海道やスイスを対象に調査を重ねてきました。大規模スキー場に比べて研究が少ない中、地域資源としての価値や住民の関わり方に着目してきました。本研究ではスイスのスキー場集落の人々がどのようにスキー活動を支え、変化に適応しているかその要因を探ります。また、都市部で育った自身の経験から、環境への負荷を抑えたレクリエーションに関心があり、中小スキー場の維持が移動負荷の軽減や地域の環境保全にどう寄与し得るのかを考察していきます。

野生哺乳類による遊歩道の利用と動物被食散布に与える影響の解明
井上輝紀さん(京都大学理学研究科生物科学専攻博士後期課程2)
私の研究目的は、人間が設置した遊歩道が、森林に生息する野生哺乳類と、それら野生哺乳類によって種子が散布される植物に与える影響を明らかにすることです。従来の研究で実施してきた糞や種子数のカウントだけでなく、センサーカメラや、糞から得られるDNA情報を活用して、遊歩道が影響を与える哺乳類個体の特徴の解明を試みます。森林で共生する動物と植物、そしてヒトの、三者共存の実現につながる研究を目指します!
LNTJリサーチチームが皆さんのLNT研究をサポートします
LNTJリサーチチームは、LNTの科学的根拠、教育効果を明らかにするために、国内の生態学、地理学、観光学、教育学、心理学、スポーツ科学など多岐にわたる研究者と情報交換を行い、LNT研究の発展を目指します。

生物学・生態学
湯本貴和Ph.D.
元京都大学霊長類研究所教授・所長
元日本生態学会会長
屋久島学ソサエティ会長
京都大学大学院理学研究科博士後期課程(植物学専攻)修了。理学博士。博士課程在学前後の2年半は屋久島に在住し、花と昆虫の関係、果実と鳥やサルの関係などを研究。長男・長女は屋久島生まれ。
その後、ザイール(現:コンゴ民主共和国)、コンゴ共和国、コロンビア、マレーシア、タイ、インドネシア、ガボン、ブラジルで、動物と植物の相互関係などの研究を続ける。とくにマレーシアでは、ボルネオ島(サラワク州)で高さ70mに及ぶ樹上での林冠生物学を主導。
現在は、生物多様性問題の主流化、とくに生き物に無関心で、「自然は、木、草、虫、カラス、犬、猫でできている」と思っている人たちに、いかに自然の価値をアピールできるかに関心がある。LNTJに期待することは、生物多様性・生態系の保全とエコツーリズムや自然体験の豊かな両立関係。
徳島県池田町(現:三好市)出身。

地理学・観光学
呉羽正昭Ph.D.
筑波大学生命環境系教授(山岳科学学位プログラム(博士前期課程)担当)。
インスブルック大学(オーストリア)大学院博士課程修了。Ph.D.。
日本とヨーロッパアルプスにおいて、地理学の立場からスキーリゾートの発展プロセスに関する比較研究を続ける。ヨーロッパアルプスでは、とくに近年のスキーリゾートでみられるレクリエーションの多様化について、トレッキングやマウンテンバイク、エコツアーといった活動にも興味をもち、「スキーリゾートの山岳リゾート化」の解明を試みている。日本では、スキーを介したツーリズムの意味を、展開する地域の視点、自然との関係の視点、休暇制度の視点から見直していくことに関心がある。
プライベートでは、趣味としてサイクリング、トレッキング、スキーといったアクティビティを楽しむ。
長野県小布施町出身。

体育学・教育学
岡村泰斗Ph.D.
株式会社backcountry classroom代表取締役兼COE
2000年に筑波大学にて野外教育に関する論文では国内初となる博士号取得。その後奈良教育大学、筑波大学で野外教育を指導。2011年に現在の会社を主宰し、日本全国で、野外企業研修、野外指導者養成などの人材育成を行う。
2013年にWilderness Education Association Japan設立、2015年にWilderness Medicine Training Center(野外救急法)ビジネスライセンス取得、2021年にLeave No Trace Japan設立など、野外教育のグローバリズムとプロフェッショナリズムの国内導入を主導。
研究活動は自然体験の教育的、心理的効果の要因に着目し、効果要因を簡便にモデル化できるExperiential Education Evaluation Formで特許取得。
プライベートでも、登山、クライミング、パドリング、バックカントリースキー、ロードバイクなどを楽しむ。
群馬県伊勢崎市出身。

社会学・心理学
阪田晃一M.S.
キャンプディレクター
公益財団法人神戸YMCA、YMCA Camp Yoshima チーフディレクター、兵庫県キャンプ協会理事。
兵庫教育大学大学院修了(臨床心理)。2024年より社会学者宮台真司氏とともに「体験デザイン研究所風の谷」を主宰。社会学講義やトークイベント、体験をデザインすることに関する啓発活動を続けている。
東京都出身