逗子葉トビ問題
問題の背景
逗子・葉山は、都心からアクセスがよく、海と山に囲まれた豊かな自然と、美しいビーチでのマリンスポーツ、おしゃれなカフェやレストランが立ち並ぶなど、湘南エリアの中でも特に人気の高いエリアです。一方で、トビが観光客の食べ物を襲う被害が古くから地域の課題となっており、逗子・葉山に限らず、湘南エリア全体で、「トビに注意」の看板をいたるとこで目にすることができます。本来トビは大変臆病な性格で、人を襲うことはなく、全国的に見ても、このトビ問題が起こっているのは、湘南エリアが顕著となっています。この大きな理由は、かつて、地元住民および観光客がトビに餌付けをしたことが原因となり、人の食べ物を襲う習性を学習してしまったことです。また、今日の観光客や、食べ物を販売する商店も、食べ物管理の仕方の教育を受けていない、提供しておらず、トビの人の食べ物を襲う習性の連鎖を止めることができないでいます。この問題により、食べ物だけではなく、身体的被害も顕在しており、行政も注意喚起以外の政策を行なっていない現状があります。
一般的に野生動物に対する人の食べ物による餌付けに以下のような問題があります。
1)野生動物の健康被害。人の食べ物は野生動物にとって有害です。
2)野生動物が自然界における本来の捕食ができなくなる。
3)野生動物と人との過度の接近による事故の発生
4)問題を起こした野生動物の駆除、殺処分
5)自然界で起こり得ない個体数の密集により感染病の蔓延


カーニバル湘南でのLNTブース展示
2023年11月3日開催された、カーニバル湘南にて、LNTブースを出展し、トビ問題に対するさまざまなワークショプや参加型イベントを提供しました。イベントの一貫として、湘南エリアに在住の参加者に対して、「これまであった、聞いたことのあるトビ問題」と、「地元の人ならではの、トビに食べ物を盗られないマル秘テクニック」について意見を集め、実際に怪我をした人や、ペットが連れされたなどのさまざま問題がすでに起こっていることや、地元の人は、トビの習性をよく理解して行動を起こしていることが理解されました。


逗子・葉山のアウトドア事業者を対象としたLNTワークショップ
地域住民の方々へのトビ問題の啓発とLNTの普及を目的に、トビ問題に関する展示ブースとワークショップを2023年 月 日に、〇〇にて実施しました。会場には 名の参加者がありましたが、逗子・葉山では「当たり前」の景色になってしまったトビ問題に改めて問題意識を持ってもらうことの難しさを感じました。
逗子・葉山のアウトドア事業者を対象としたLNTレベル1インストラクターコース
トビ問題の解決に向けたアクションプランの策定にあたり、逗子・葉山エリアで活動するアウトドア事業者、観光関係者の方々と、トビ問題にフォーカスした7原則の理解を深めるためのレベル1インストラクターコースを開催しました。参加者は、トビ問題をテーマにした7原則のティーチングを行い、7原則全ての実践が、トビ問題解決にいかに重要か理解するコースとなりました。



NAMIMATIとのPRパートナーシップ
逗子・葉山エリアでのスポットライトがきっかけとなり、逗子を拠点に、Z世代による社会課題の解決に取り組む「NAMIMATI」と、PR連携パートナシップを結ぶこととなりました。NAMIMATIに所属する意識の高い若者たちにより、SNSを中心にLNTを発信することとなりました。


行政・住民意識のギャップ
スポットライトによる、これら一連のアクションで、民間アウトドア事業に対しては一定の発信はできたものの、その後のアクションの継続に課題を残しました。一つの原因は、この問題に対して、現在の住民が湘南エリアの「当たり前」の景色となり、このエリアのトビの異常な習性や、潜在的問題の重大さに気づいていないということです。また、行政としても、LNTにより観光客の行動を制限することが、地域にマイナスの印象を与え、観光客の減少につながるのではないかという意識もあります。これはもちろん大きな誤解であり、LNTを導入せずに、野生動物による人的被害が起こった観光地は、その後深刻な経済問題に発展しています。LNTが地域に根付き、健全なアウトドア観光地を持続させるために、より一層の取り組みが必要であることが理解されました。

