LNTを通じて多良間島の魅力を発信
多良間村ふしゃぬふ観光協会
藤松英子さん
今回は、多良間島で、その魅力を発信し続ける観光協会事務局員の藤松英子さんにお話を伺いました。
多良間島は宮古島と石垣島のちょうど中間に位置する人口1000人程、周囲約19kmの離島です。主な産業は、サトウキビ栽培と、酪農が中心です。日本で最も美しい村連合にも加盟している通り、これまで過度な開発を避け、伝統的な文化や、暮らしと融合した自然環境を維持してきたとても素朴な島です。
観光協会は2019年に法人化し、それまでは、年間6000人観光客が訪れるどうかといった、とても静かな島でした。今後、コロナが終息し、島を訪れてる人が増えても、今まで変わらない多良間島を維持するために、自治体の観光関係者をあげて、LNTを推進していくことになりました。
多良間島の最大の魅力の一つは、島内の海岸に約50ヶ所点在する「トゥブリ」というとても小さなビーチです。多良間島を一周する道路から、ブッシュの小道を抜けると、真っ白な砂浜と、青い空と海が突然開けるとても素敵なビーチです。島の人は、昔から行きつけのトゥブリがあり、もちろん私有地というわけではありませんが、仕事の合間に休憩したり、魚介類を採ったり、家族で大切な時間を過ごしたりと、各家ごとに特定のトゥブリに対して、特別な思いが詰まっています。
藤松さんは、このトゥブリを観光客の方にも楽しんでもらうためにも、LNTの考えがとても大切になると考えます。観光客が、地元の人や、環境に配慮なくトゥブリを利用すると、たちまち環境が悪化し、島の人との問題が起こり、すぐに利用が制限されてしまうと警鐘を鳴らします。多良間島の人たちは、とてもホスピタリティがあり、これまでの観光客に対してもとてもフレンドリーですので、これから観光客が増加したとしても、LNTによって、この良好な関係が続くことを期待しています。
また、藤松さんは、島民がLNTを学ぶことによって、環境負荷をより意識した行動になるだろうと考えています。島の人にとってトゥブリは生活の一部で、ずっと長い間その環境を変えることなく利用されてきましたが、LNTの原理と照らし合わせることで、環境に配慮したより良い利用がなされていくのではないかと考えています。LNTはあくまで多良間島を訪れる観光客の行動を問題としていますが、藤松さんは、この美しいトゥブリをこれからも守り、後世に引き継ぐ上で、島の人にとってもLNTはとても大切であると述べます。
多良間島は、2022年1月に、役場の観光課の職員、観光協会職員、アウトドアガイドの方々13名を対象に、LNTトレーナーコースを開催しました。観光産業が盛んな他の南西諸島の島とは異なり、まさにこれから多良間島らしい観光サービスを作っていくため、新しくて、より良いことを取り入れやすい環境にあります。LNTの考え方やシステムが、多良間島の目指す観光の在り方にお役に立てることを楽しみにしています。