LNT原則5 残炭の行方を知っていますか?

ほとんどのキャンプ場や、野外炊事場には、焚き火で燃え残った炭の集積場があります。ビジターは、次に来た人のために、かまどをキレイに掃除して、残炭を残炭捨て場に捨てて、スッキリした気持ちでキャンプ場をあとにします。

さて、キャンプを楽しんだ皆さんは、この残炭の行方を考えたことがありますか?

実は多くの施設で、この残炭はキャンプ場内、場外に投棄、もしくは埋められています。ときには不法投棄もあるかもしれません。

「炭」は元は木なので、いずれに土壌に戻るのではと考える方もいるかもしれませんが、炭はタンニンという物質に変化し、有機物を分解する、土壌生物や菌類によって分解されない特性があります。

一方、完全に燃え切った、真っ白な「灰」の状態になれば、カリウム、マグネシウムなど、元々木に含まれていたミネラル成分のみが残り、自然界にもする物質になります。

私が約35年間運営し、毎日野外炊事をするキャンプ場は、最初の15年間は全く残炭を出したことがありませんでした。カマドの炭はそのままにしておけば、次の野外炊事でまた使い、灰になるまでも燃やし切ることができます。シーズンの終わりに、少量残った炭をまとめて灰にして、周囲の森に巻けば、ほとんどインパクトはありませんし、むしろ土壌を豊かにします(焼畑農業もこの原理です)。

ところが、ディレクターから離れていた5年間の間、この「炭」と「灰」の間違った理解により、5年後にキャンプ場に戻ったところ、炊事場の立木の根元に大量の残炭が積み重ねられていました。おそらく、この間のスタッフは、「灰は森を豊かにする」という原理を、「灰」と「炭」の区別がつかず、「分散」ではなく、立木に肥料を与えようと「集中」させてしまった2つの誤解があったのでしょう。

私が戻ってから15年経ちました。立木の根元に体積した炭は、表明にうっすら苔が映える程度で、全く変化なく残っています。私がディレクターでいる間になくなることはないでしょう。

焚き火はキャンプの楽しみの一つです。かつては直火による土壌へのダメージが散見されましたが、近年では焚き火台の使用が普及し、土壌へのダメージの問題は大きく改善されました。

一方で、残炭の処理はどうでしょう。みなさんどうしていますか?

私たちにできることは、
1)灰になるまで燃やし切る
2)必要以上にたくさんの薪を使わない
3)どうしても炭が残ってしまった場合は、消化してできる限り細かく砕く
ことです。

例えキャンプ場に残炭置き場があったといえども、できる限りにそれに頼らなようにしましょう。

話を、キャンプ場の残炭の処理に戻しましょう。上述した通り森に投棄された炭は、ほとんど分解されません。日本のキャンプ場の周辺の森には、こうした残炭が人目につかず散在しているかもしれません。あたなの残した残炭を、あなたの子どもや、孫に見せたいですか?

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